ずい分前に話題になったこの本。やっと読みました。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
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文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
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上下2冊のボリュームもさることながら、中身もかなり読みにくい感じでした。^^;
著者は、大学の教授だけあって、アカデミックで曖昧さや厳密さにかなりの正確さを求める書き方で、論文っぽい文調で、回りくどく同じような内容が何度も何度も繰り返し説明されます。
そして、民族や地名などの大量の固有名詞と数字の羅列・・・・。^^;
と、書くと非常に退屈な本のように思えるかもしれないですけど、ところがこれが非常に面白い。
約1万3千年前から始まった狩猟生活から農耕生活への転換。
現在飼育されている家畜が何故「選ばれた」のか?
普通に生活していて、殆ど疑問に思うことのないような、「あたりまえ」がどのようにして形作られたのか。
どのような要因によって、どんな民族が生き残り、他を蹂躙し、今の世界を形作ってきたのか。
非常に興味深い内容で、退屈な文体にもめげずに最後まで読み切ることが出来ました。
タイトルに有る、銃・病原菌・鉄ですが、本書で大きく扱う内容は、この中では「病原菌」で他の2つはオマケです。多分。^^;
ヨーロッパ諸国が、アメリカ大陸を制圧した、最大の直接的な要因はこの病原菌だったそうです。
では、何故アメリカ大陸の病原菌によってヨーロッパ人が倒れるのではなく、ヨーロッパ人の病原菌によりアメリカ原住民たちが倒れたのでしょうか?
それには、農耕と牧畜による食料生産性の飛躍的な向上による人口増加と高密度化が大きく関わってきます。
では、農耕を始めた地域と始めなかった地域にはどのような差があったのでしょうか?
このような問いかけに対し、本書が書かれた時点の最新の研究成果から、筆者の考察が続きます。
微に入り細に入り、高密度な情報の羅列で休まずに考え続けるのが、本書です。
1万3千年を2冊の本でたどるのは「非常に大雑把だ」と筆者は言っていますが、門外漢の一般人からすると、非常に緻密です。
そこからは、下手なファンタジー小説では味わえないような濃密で壮大なドラマを感じ取ることが出来ます。
最終氷河期が終了し、アラスカ経由でアメリカ大陸に渡った人類にどのような運命が待ち構えていたのか。
家畜になるような大型の哺乳類を絶滅させていなかったら、違った世界になっていたのか?
ニューギニア高地で数千年前から農耕生活を営んでいたパプア人達の生活とはどんなものだったのか?
アボリジニ達の生活は?
古代人類から近世に至るまで、幾多の狩猟民族社会が、農耕民族達に蹂躙される歴史を繰り返してきました。そこには、筆舌に尽くしがたい凄惨な略奪と殺戮の歴史があったのでしょう。歴史書に語られることのない数多の物語に思いを馳せると、人類の罪深さと人の世の儚さを強く感じます。
満腹しました。
オススメです。