かつての技術大国日本
かつて、日本は技術立国と言われ、機械電気電子産業において、世界に名だたる企業を幾つも輩出し、それこそ日の出の勢いで世界を席巻した。
これらの産業が好調だった頃、日本におけるシステム開発とは、それらの巨大な利益を挙げる企業に対して電算化を施し、業務を効率化することのが使命であった。
あくまで、日本の主産業は機械電気電子産業であり、総合商社や金融、通信、広告などの産業が日本の社会の中心を占めていた。
彼らにとって、システムインテグレータ(SIer)とは、出入り業者のことであり、注文に合わせてビジネスシステムを遅滞なく構築し、安定運用してくれさえすればそれでよかった。
難しいことはしなくてよいと思っていたし、自分たちの想像を超えるようなイノベーションなんて求めていなかった。
親同然の主要産業たち
日本のSIerにとって、そんな彼らは長らく親同然の存在であった。
実際に、日本を代表する巨大SIerは、機械電気電子(通信)産業の落とし仔たちで占められている。
彼らは、親の稼業を「お手伝い」することで小遣いを得てきた。
日本の主要産業に位置する巨大な親たちに奉仕すること。
それが全てなのだ。
硬直する価値観
いつの間にか、SIerたちの価値観は硬直していった。
いや、生まれてから数十年、それ以外の価値観で仕事をしたことがないのだ。
お手伝いこそが、世界そのものといっても過言ではない。
SIerにとって、親の庇護を離れるということは、「別の親同然の会社を探し出し、お手伝いをしてお小遣いをもらうこと」ということになる。
いっぱい親のお手伝いして、いっぱい小遣いをもらえたSIerが良いSIerということになる。
しかし、今やそれらの産業は斜陽となり、親となる産業は衰退してしまった。
親もいつかは年をとるという事だ。
衰退し斜陽となる日本
本来であれば、ITこそが次なる主要産業として日本を引っ張っていくことを期待されているのだが、いかんせん乳離れができない。
今まで、世界的なシェアを持ち、大きく稼いでいる産業があることを前提に、何十年もお手伝いに徹してきた「良い子」が、急に自分たちで新たな世界規模の産業に立ち向かい、シェアをとって稼げといわれても、やり方もわからないし覚悟もできていないというのが実情だ。
世界は刻々とソフトウェアと情報の世界にシフトしている。
資源を持たない日本が、この先生きのこるには、ソフトウェアを世界的な産業に育てあげ、世界をリードしていかなければならない。
いつまでも、親の庇護下におり、親の手伝いをして小遣いをせびるという意識では、衰退の一途を避けられない。
滅亡まであと少し。
日本のソフトウェアが世界を席巻する日は来るのだろうか?