- 作者: 馬田隆明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/03/08
- メディア: 新書
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「逆説のスタートアップ思考」読みました。
スタートアップとは、FacebookやUber、Twitterなど、最近現れてあっという間に世界を席巻してしまったサービスや製品を作り出す、スピーディで爆発的に成長する起業や組織を指す言葉です。
この本は、スタートアップについて解説しているのですが、タイトルに「逆説の」とある通り、スタートアップという集団の持つ行動原理や哲学とったものは、「普通とは逆」だったり「ぱっと見最悪の選択肢」に見えたりします。
真理とは常に逆説的で、直感に逆らうのもですが、スタートアップもその一つということです。
反直感的なので「何故そう考えるのか?」ということが、わかりにくい部分もあるのですが、この本では、様々なスタートアップの反直感的な考え方や行動様式について、実例や数字を踏まえながら、わかりやすく解説されています。
本書を読むことは、逆説的な世界への冒険です。
次々と現れる不可解な言説にどんな秘密が隠されているのか、ドキドキ・ワクワクしながら読み進めることができるだけでなく、スタートアップの精神を学ぶことで、今からでもスタートアップを始めて、実際に自分の手で、冒険の世界を体験することだってできるのです!
こんな素晴らしい本は、なかなかお目にかかれるものではありません。
正直言うと、3月9日の発売とともに手に入れておきながら、読むのに3ヶ月も掛かってしまいました。というのも、この本はある意味非常に読みにくかったからです。
2,3ページほど読み進める度に「今すぐスタートアップしたい!」とか「今やってるスタートアップで今すぐできることが一杯あるんじゃないか」とか「あれをやったら面白いんじゃないか」みたいな、アイデアだとか興奮だとかが次々と湧き上がってきて、それを抑えるのが大変でした。
居ても立っても居られなくなるので、じっと座って10ページ読み進めるのにも相当な忍耐力が必要になりました。
まさに読むドラッグです。
著者の馬田隆明さんは、Slideshareで多数のスタートアップ関連のスライドを公開されています。
量が多いですが、その分、内容的には濃いと思いますので、一読されることをおすすめします。
内容
内容について、目次に沿って少しだけ紹介します。
アイデア
良いアイデアは、悪いアイデアのように見えるとのことです。
誰からも悪いアイデアのように見えて、相手にされないような狂ったアイデアの中にこそ、スタートアップに適したアイデアが潜んでいます。
戦略
スタートアップは、小さな市場にフォーカスして、それを独占することが重要な戦略です。
競争を避け、あっという間に独占することが求められます。
プロダクト
プロダクトは、多くの「好き」を獲得するよりも、少数の「愛してる」を獲得する必要があります。
そのためには、スケールしないこと(規模を拡大出来ないこと)を行う必要があるということです。
カスタマーサポートやセールスを創業者が積極的に行い、少数の最初の顧客との対話を通して顧客をカスタマーサクセスへ導くことが成功への一歩となるのです。
そして相反するようですが、スタートアップは常に成長し続けなければなりません。成長を妨げるボトルネックを解消しながら急成長を遂げることが求められます。
運
スタートアップが成功するためには、「運」が重要です。
殆どのスタートアップが失敗するため、可能性は非常に小さなものです。そのため、成功するための基本戦略は「なるべく沢山失敗する」事になります。
そこからの逆算でスタートアップの行動原理は決まっていきます。
逆説のキャリア思考
スタートアップは、非常に高いリスクを背負う生き方になります。
しかし、現代の社会情勢を考えると、失敗のリスクと変化しない安定を単純に天秤にかけることは出来ません。
変化しないリスクが、失敗のリスクを上回る時代がやってきているのです。
何を持ってリスクとするのかは人によって違います。逆説的な思考を理解した人であれば、見えてくるリスクも自ずと変わってくるという事になります。
さいごに
つきなみですが、テクノロジーの進歩や社会の複雑化は、加速度的に進んでいきます。
旧態然とした起業が生き残れる期間がどんどん短くなっているのです。
日本には、資源も土地も無いですが、今活躍しているスタートアップ企業を見てみると、資源も土地も必要のない、インターネットやモバイル端末を利用した企業ばかりです。
これは、間違いなく日本にとって有利な材料なはずです。
一人でも多くの起業家が生まれ、スタートアップにチャレンジし、素晴らしいサービスやテクノロジーで世界を変えてしまうような未来が訪れることを願っています。
そして自分も、拙くはありますが、スタートアップにチャレンジする一人として、今すぐにでも世界をかえてしまいたい!と、野望に燃えるのでありました。